2009年8月12日
さて。一言で接合といっても、その対象となる土器は、底部や口縁部など一部分しか破片がないものから、1個体分の破片がほとんどそろっているものなど、さまざまです。今回は、ほとんどの破片がそろっている土器をどのように接合していくか、その過程を写真で紹介したいと思います。
なお接合の注意点として、細かい破片がたくさんあるほど、接合する時に本来の土器の形や曲面を意識しておかないと、ちょっとした接合のズレが原因で最終的にはおおきな歪みとなってしまうことがあります。常に接合した部分が土器の元の形に近いかを確認しながら慎重に接合します。
写真A
ある程度の大きさまで破片を接合すると、いよいよ土器を本来の形に組み立てていきます。方法としては、底部から組み立てたり、口縁部からだったり、何パターンかありますが、土器の特性(平底や丸底など)や私たちの得意不得意だったりで、臨機応変に組み立てていきます。
この土器の場合、器高(口縁部から底部までの高さ)が19cmと、小さめの為、口縁から底部までの破片を3分割にして接合する事にしました。
写真B
全て接合してみると・・・。
写真C
何ヶ所か、破片の足りないところがあるようですね。その箇所は、どうしても強度が弱く、せっかく接合したのにまた壊れることになりかねません。そこで「補強」が必要となってきます。
次回は、その「補強」について・・・。
2008年11月25日
前回の答えは①のセメダインCなどの接着剤でした。スーパーの文房具売り場でもよくみかける一般的な接着剤で、特殊なものを使用しているわけではありません。
さて、ただ接着剤をつけただけでは、固まるまでに歪んでしまい、うまく組み上げることはできません。そこで活躍するのが「ピンチ」です。
接着剤をつけた土器の破片同士をピンチで固定することによって、接着剤が固まるまでズレたり歪んだりするのを防ぐわけです。ピンチはアルミでできているものを使います。それは軽くしかも挟む力があります。そして少し手を加えることで、歯の形や角度を変えることができるのです。接合するときの破片は直線的ではなく、微妙なカーブを描く場合が多くあります。そのため固定する道具もそれにあった微妙な接地面が必要となってきます。これはなかなか既存のものではありませんが、アルミ製ピンチはこの調整が比較的簡単にできるのです。このほかクリップなども利用して接合面のズレがないようにします。
でも最初はなかなかうまくいきません。せっかく接合したと思ったのに、わずかにズレたり、歪んだりすることはよくありました。その時はまた接着剤を溶剤ではずして最初からやり直しです。でもやっていくうちに破片のどこを挟んだり固定したりするとズレにくいかということが、何となくわかってきます。何事も経験ですね。
このほか固定する道具として、粘着力の弱いテープ(粘着力が強いと土器の表面が剥がれてしまう)や紐など、私たちのまわりにある道具をうまく使いながら、元の形に近づくように土器を接合する毎日です。
(写真:接合に使うピンチやクリップ)
2008年10月20日
同じ個体の破片を集めて、それを机の上で展開して、おおよそのかたちがわかる(前回「つれずれ4」写真)と、後はどんどん破片同士を接合していきます。
ひとつ接合しては接着剤が固まるのを待ち、その間に他の破片を接合していきます。その繰り返しでどんどんともとのかたちに近づけていきます。でもこの接合は何度もやり直すことはできません。
なぜなら土器の接合面がもろいからです。
接合した破片がはずれると、その接合面は接着剤とともに薄くはがれてしまいます。それを繰り返してしまうと、面が摩滅してシャープでなくなり、破片同士の接点があまくなり、接合がむつかしくなります。
そのため、軟質な土器の接合は、土器自体を保護液によって硬化するなどの前処理を行ったり、接合作業を慎重にすすめるなど、注意が必要です。また接合面がピタッと合っていないと、底部からつくりあげた場合、最後に歪みが生じてきます。
むつかしいですね。
さあ ここから問題です。
「土器の接合にはどのような接着剤を使っているでしょう?」
①セメダインなどの工作用接着剤
②両面テープ
③のり
写真の中から選んでみてください。
2008年7月21日
同じ個体の破片を集めたら、接合可能な破片を並べてみることで、ある程度土器の形をイメージすることができます。これによって見つかっていない破片の形を思い描き、その破片を探し出すことになります。
写真のように並べた破片を接合していきます。このとき、土器が脆い状態であるなら、保強剤を使います。表面をコーティングしたり、内部まで含浸させることで、土器片を強化するものです。これをしないと、高さのある土器の場合、接合して組み上げていく途中で、強度が十分でないことから崩れてしまうことがあるからです。また接合面がはがれやすくなると、何度も繰り返すうちに接合しにくくなってきます。接合前のひと手間ですが、これがともて大切な工程です。
ところで、たくさんの破片からなる土器は、その多さに困惑してしまいます。このときは小さな破片をまず接合し、大きなパーツをいくつもつくることで、土器の形やそれに適した組み立て方の順序を考えいくことが、接合のポイントです。
2008年6月23日
遺物が乾燥したら、いよいよ接合です。
発掘調査では、土器が完全な形で出土することはほとんどありません。多くはバラバラの状態で取り上げられます。そのため多くの土器の中から同じ個体の破片を見つけ出すことから始めます。
乾燥が終わった土器を机の上に並べます。出土した場所または同じ遺構ごとに見ていき破片を探していきますが、遺構から出た遺物がとてもたくさんあるとき(写真)は見るのもひと苦労です。さらに離れた場所からも破片が発見されることがありますので、接合する土器の特徴をしっかり頭の中に入れておかねばなりません。取り上げた日付や状況をチェックしながら、ひとつひとつ少しでも形になってくれるように、今日も私たちは破片を見ながらぐるぐると歩き回っています。
2008年6月 9日
洗浄後は干して乾燥させます。
紙聞紙を敷いたコンテナ、籠などの中に遺物を広げて、十分に乾燥させます。この時、籠の中は出土場所が同じ遺物でまとめ、他の遺物が紛れないように注意します。
当センターでは、写真の籠を乾燥用に使っています。昭和の雰囲気がするピンクの脱衣籠ですが、いつのころからか整理室で使用しています。編み目の幅が広いので、通気性がよく丈夫で、重宝していますよ。
天気の良い日は太陽にあてて干したり、風通しのいい場所に置いたりします。冬は気温が低いのでなかなか乾燥しません。十分な乾燥をしないと、次の接合作業ができませんので、ストーブのそばに置いたり、こまめに裏返したりして、早く乾燥するよう心がけています。
2008年5月15日
前回の答えは、 「土器を洗う」です。
調査現場から持ち帰った土器には、土などが付着したままのものがほとんどです。そこで丁寧に洗い落とす必要があります。
まずザルの中に土器の破片を入れて、水につけて汚れを落とします。ザルを使うのは、洗う途中に小さな破片をなくさないようにするためです。土器は焼きが不十分でもろいものや、表面に紋様があるものがありますので、洗うときには壊したり、紋様を消したりしないように、注意深く丁寧に水洗いを行います。このときスポンジやブラシなど柔らかい素材のものを使用します。また土器の断面(割れ口)についた土もきれいに除いておかないと、破片を接合しにくくなりますので、硬いブラシや千枚通しを使って頑固な付着物をおとします。このほかさまざまな硬さのハケや針など、土器や汚れの状態に応じながら道具を使い分けています。
2008年5月 9日
説明しよう!!
「つれづれ」とは、整理室で行う土器復元などの遺物整理作業を、クイズや写真で紹介するコーナーなのである。発掘調査で出土するたくさんの遺物たち。それらがどのように整理・復元されていくのだろうか。このコーナーをみれば、それが明らかになる(かもしれない?)。
では、今回のクイズです。
「写真の道具は、遺物整理作業でどのように使うのでしょうか?」
答えは次回!